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達人指南 残心

剣道が、他の武道と大きく違う特徴は、気合を出すことと、残心を執ることだ。この二つの特徴が、剣道を崇高なものにしているといっても過言ではない。今回は、残心について考える。(残心とは、勝負のあと油断しない心を言う。)残心の所作は剣道のキーポイント 残心は相手を切ったあと油断しないという心だが、それは、相手を一刀の下に絶命させることは不可能だ、という含みがあることを理解しておきたい。居合で二の太刀で止めを加える技が多いことも、ひと太刀では決着がつかないことの裏付けといえよう。相手を先に切っても反撃する力は残っているから、必要があって残心を執るこということだ。 どの古流においても、残心は欠くべからざる心得であるが、この残心を「所作」として表わしているのは、小野派一刀流、一刀流中西派、北辰一刀流、無刀流なの一刀流系が主である。それは、流祖・伊藤一刀斉が、とくに残心に注目していたため、それを意図的に「所作」に残したからといえる。 のちに一刀流が北辰一刀流に発展し「剣道」の元となり、また、北辰一刀流から発展した無刀流は「刀に依らず心を以もって心を打つ」という、人の道を説く剣道……もはや宗教といってもよい……になったことを考えると、「残心所作」は剣術が剣道に発展するためのキーポイントだったのかも知れない。残心は 一 刀流系の特徴 一刀流系の特徴は、技を心で使うとしているところだ。たとえば、「切り落とし」である。剣を切り落とす技術の名称だが、一刀流免許皆伝小川忠太郎先生によれば、この言葉は、生きるという執着心を切り落とさなければ、切り落としは掴めない、という精神的な意味も示唆しているという。 これは剣法上の「捨て身」と同じであるが、勝つための剣ではないという発展が一刀流の特徴だ。言葉を足せば「我を切り落とし、生き死にを捨てる」ということで、禅でいえば無心の境地を指している。 一刀流の奥義は、初期にここまで深まっていたので、時代の平和とともに発展し、結果的に剣の技術だけでなく、道としての姿を剣に与えることになった。

宗家 椎名市衛成胤 について

宗家 椎名市衛成胤(しいなかずえなりたね) 昭和28年生まれ。茨城県竜ケ崎市城ノ内3-13-7 。竜ヶ崎一高、芝浦工大卒業。 日本伝統文化保存会会長、直心影流師範、鷹匠、剣道場建築「武床工舎」代表である。 7歳のとき父が夭逝し、少年時代から旧家の惣領としての道を歩む。父の死をきっかけに、人生や生死の問題について深く考えるようになった。中学で剣道と出会い、陸軍大尉であった恩師武田治衛先生の生き方に感化され、以後、剣道に打ち込むようになった。竜一高剣道部では個人でインターハイ出場。芝工大剣道部では故佐藤博信師範(剣道範士八段・警視庁主席師範)の指導の下、全日本学生剣道選手権に出場する。 卒業後、大手建築会社に就職するが、理想の人生を追い求め、1年で退職。剣道を生活の中心に置き、アルバイトをしながら全国の達人を訪問し指導を受ける。 28歳の時に、後世を育てんと教員を志し、母校へ再入学。教員免許を取得、中学教諭となる。佐藤師範の元、剣道部コーチをしながら多くの技術を得た。 「人間は13,4歳頃の教育が一番重要だ。」という小川忠太郎先生の一言で中学教師をめざした。22年間、52歳まで管理職登用には目もくれず平教員を全うした。剣道を応用した独特の指導法は、多くの生徒・保護者の信頼と共感を得、また感動を与えた。マニュアルを超越した、時と場所に合わせた融通無碍な指導は、生徒の成長に大きな影響を与えたが、体裁を重んじる管理者や管理職には不評であった。 やりがいを感じながらも、行政への失望と剣の奥義を極めたいという情熱を捨てきれず退職。マイウェイを進むことにした。私淑した師匠は、前述の先生のほか、剣道・剣術では、直心影流・酒井章平先生、北辰一刀流・谷島三郎先生、北辰一刀流・青木秀男先生、剣道・堀口清先生、神道無念流・中倉清先生、北辰一刀流・小中沢辰男先生。弓では無影心月流・鷺野暁先生。それぞれの先生より精勤の印として、数々の物が下されている。 20歳のころより剣道場床構造に興味を持ち研究を重ね、独自の工法を開発。退職を期に剣道場床工事専門会社「武床工舎」(ぶしょうこうしゃ)を創立する。 2013年、千葉家から請われて、第7代宗家を襲名、椎名市衛成胤を名乗る。143年ぶりに宗家がを復活することとなった。  専門の剣道・剣術はもとより、道場建築・禅・古流武道・弓道・香道・兵法・放鷹術・陶芸・木工・日本刀・和装文化・日本伝統建築・庭園のプロデュース等、日本の伝統文化全般にわたる。過去には「剣道日本」で10年間連載を持ち、「真理・真実を追求した唯一無二の剣道家」と好評を博した。 近年は現代社会への危機感から、本来の日本人の魂や生き方を伝え、次世代の人材育成を目指す教育啓蒙活動に尽力している。剣の道を追求する中で培った人生観を基にした教えは、剣道経験の有無を問わず、多くの人々の心を打っている。 国内外で講演・指導・工事の依頼を受けて、世界中を飛び回ると共に、その指導に感銘を受けた受講者が、毎年、自宅道場へ修行に訪れている。 著書「日本武術武道大事典」剣術・剣道部門執筆(勉誠出版